発達障害でギャンブル依存症夫をギャンブル外来へ連れていく~後編~

ギャンブル依存症

前回の記事の続きです。

黙って俯き何も考えてないように見える夫と、輝いていた彼を思い出し、涙を堪える私。

診察室の中から名前を呼ばれたので立ち上がると、夫は顔を上げました。

でも、それだけ。立ち上がる素振りがない。

「呼ばれた!早くっ!行くよっ」

そう夫に声を掛け、早く部屋へ入るよう促しながら私も後に続いたんだけど、診察室のドアを開けて面くらいました。

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何故??3人の医師と対面する

なんとですね、診察室のドアを開けると、そこには3人の医師が座っていたのです。

え?3人もいるの!?

夫は変わらずボーっとしている。すると1人の医師が声をかけてくれました。

奥さんも来てくれたんですね~

どうぞどうぞ、こちらの椅子に

気さくな感じの先生が声を発すると、その脇にいる先生が素早く私に椅子を用意してくれました。もう一人の先生はひたすらパソコンに何やら打ち込んでいます。

どうやら、今声をかけてくれた先生が主治医。

パソコンに打ち込んでいる先生は多分助手。

椅子を用意してくれた先生は白衣を着ておらず私服だから見習いの先生になるのかな?

そんなことを考えていると

はじめまして。

宜しくお願いします。

名刺をいただきました。

えーーすごい。名刺いただけるんですか?

感動する私。地元クリニックのヤブ先生の高圧的な態度とは大違いです。

今度の先生は良い先生なのでブログ上ではヨシ先生と名付けよう(何様)

一語一句パソコンに打ち込まれる診察

診察が始まると、ヨシ先生は夫にひたすら質問をしていきました。

内容は一語一句、隣に座っている助手と思われる先生がパソコンに打ち込んでいます。

私は夫は話すことはできないだろうと思ってましたが、自ら話はしないものの聞かれたことには答えてました。

途中、夫独特の長ーーーーい沈黙があるんですが、先生方はじっと待っててくださった。

私も夫の言葉を邪魔しないよう口は挟まずにいました。

それでも前回箇条書きにした内容は半分も伝えられてなかったと思う。

先生が「奥様からも何かありますか?」と聞いてくれたので、残りは私の口から話をしました。

そして私たちは先生からこんなことを言われました。

ご主人はギャンブルへの衝動がかなり強いタイプ。

特に返済日が近づくと衝動が大きくなるようですね。

はい、そうなの。その通りなんですよ。

私が心で頷いてると、続けて先生はこんなことを。

返済は奥さんが管理してみたらどうですか?

…う…うん。そうだね、その方がいいんだろう。私もそう思う。

でもさ、夫はギャンブル依存症なわけだけど、依存症の治療って家族は手伝わないが鉄則だよね?本人が痛みを伴わないとまた繰り返すよね?

これはどう考えればいいのだろう。

私はその疑問を投げかけることにしました。

そうした方が私もラクです。

でも、ギャンブル依存症者の借金は家族は手伝ったらいけないと言われてますよね?

彼の場合は発達障害があるから手伝った方がいいということですか?

すると先生からはこう返ってきた。

発達障害が絡むと個々に応じた対応を考えなければならない。

ギャンブラーの返済は手伝ってはならないという従来の考えはご主人に対しては不要です。

そうか。

やはりそうなのか。

私がYクリニックのヤブ先生に対して感じていた違和感が間違えてないことがわかり安心しました。

やはり根っこに発達障害がある場合、ギャンブル依存症の治療は本人に任せていてはダメなんだ。「底付き体験も」意味が無いんだ。

底付き体験とは、依存症から抜け出すキッカケになるような辛い体験のこと。アルコールやギャンブルから抜け出すには「痛い目に遭うことが大切=底付き体験が必要」との考え方が主流でした。

ヨシ先生の言葉を聞き、自分が考えていたことと先生との間にズレがないことがわかり安心する私。

でも、すぐに不安にも襲われました。

いや待てよ。ということは…

よしこれも質問してみよう。

夫が作った借金は家計から返済するように

ある疑問が頭に浮かんだ私は、恐る恐る先生に聞きました。

もしかして、お金を工面することも家族がやった方がいいのでしょうか。

今まで彼が作った借金はアルバイトして返すよう伝えてましたが、家計から返した方がいいですか?

そうですね

え゛ぇーーーー!!!

自分で尋ねたくせに、思わず、えーー!!っと叫んでしまった。

だって、今まで何回家計から返済してると思うんだ。

あの時もあの時もあの時だって…

隣にいる夫を見ると、彼はひたすら貝になっています。

そうよね、あんたはいつも貝になる。

先生は続けます。

家計から返すにしても返済計画は一緒に立てて……

後半覚えてません。

だって、この時の彼の借金は総額137万円。どうせいつもみたいにまた次々と出てくるよ。あの時もあの時もそうだったからね、今まで何百万払ってきたと思っているの。

子どものために貯めたお金

必死に節約して貯めたお金

それをまた使うのか。

ギャンブルのために!!

当然、ふざけるなという気持ちが沸いてくる。

でも一方で、仕方がないという気持ちもある。

だって。

コイツと一緒にいることを選んでるのは自分だから

そうだよ、私が選んでるんだよ。

離婚したくても今は無理なんだから。

今はコイツとやっていくしかないんだよ。

更に、この人に任せておけば、永遠に借金の返済はできないだろう。今まで何度も見てきたじゃない。

っていうことは。

悔しいけれど、ムカつくけれど、家計から返すしかないのです。

仕方がない

私はこの場で、腹をくくりました。

ルール作りと認知行動療法

当然のことながら、ギャンブル依存症は借金を返したら解決するわけではありません。

じゃあ、これからどうするか この先が何より大事になってくる。

そして、肝心な夫がここの意識が薄いときてる。

家計から返すことで本人の「底付き」ができなくなりますよね。

この先繰り返さないようにするにはどうしたらいいですか?

ルール作りです。

ただ作るだけではなく、紙に書いて目につく場所に貼ってください。

ルールは何度も作ってきましたが、変わらないです。

紙を貼っても効果があるのは数日で、紙ごと景色になるようです。

サクッと言い返すと、先生は(じゃあ代わりに)と言わんばかりに夫に宿題を出しました。

1日の行動スケジュールを毎日書く

というもの。

・何時から何時まで何をしたか
・その時どんな気持ちだったか
この2つを書くそうです。認知行動療法の1つかな?

次の診察は2週間後。

それまで毎日書くようにとプリントを数枚貰い、この日の診察は終了となりました。

なんだろう。

私は、不思議な感覚に襲われてました。

137万という大金が失われるショックに襲われつつも、それに相反するようなスッキリした気持ちも感じてる。

スッキリすると言っても(これで夫は回復する!)なんてことは微塵も思っていないから。

長い長いトンネルで何も見えずにもがいていたけど、針の穴くらいの小さな光が差し込んできたような、そんな感覚。

トンネルはまだまだ暗いんだけど、でも見えた。真っ暗じゃなかった。

針穴の光はやるべきこと。

小さくてもやるべきことが見えたことに、私はスッキリしていました。

見てろよ。針穴。

広げてやろうじゃないの。

絶対立て直してみせるからな。

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